「オタフンベチャシ」の保全をもとめます

令和4年12⽉26⽇

北海道知事 鈴⽊直道 殿

ラポロアイヌネイション 会⻑ 差間正樹

国指定史跡オタフンベチャシ跡の保全対策に関する要望書

浦幌町字直別に存在する国指定史跡オタフンベチャシ跡は、近世に構築された、道東のアイヌ⺠族にとって⼤切な遺跡です。
地域の⼈々からお供⼭と呼ばれてきたこのチャシには、⽩糠アイヌと厚岸アイヌの戦闘伝承も伝わっています。標⾼27mの⼩⾼い丘には環状の濠が残り、厳しい海⾵にさらされて樹林化もせず、美しい⼩⼭状の形状が良好に保存されているチャシとして、広く知られています。1981 年には、国の史跡に指定されました。

いま、このチャシの海岸沿いを通過する「道道1038号線(直別共栄線)」を、チャシの内陸側へ付け替える⼯事が、北海道によって進められています。建設⼯事が終了すると、これまで道道を⾼波から守ってきた海岸線の擁壁(貼付写真参照)は、道路が存在しなくなることから撤去されると聞いています。
しかし、この海岸擁壁が撤去されてしまうと、チャシが直接海岸線と向き合う形となってしまいます。近年、海岸線の浸⾷が激しいことから、数年のうちにチャシ本体が海岸浸⾷の影響で損壊してしまう恐れがあります。
オタフンベチャシは、私たちアイヌ⺠族にとって⼤切な遺跡であるとともに、⽂化財保護法によって国の史跡に指定された、国⺠全体にとっての⼤切な⽂化遺産でもあります。もちろん、地元浦幌町にとっても、アイヌの歴史を伝える⼤切な財産であると考えています。道道移設後もチャシが良好な状態で保全されるよう、以下のことを要望します。

要望1.現在、道道保全⽤に設置されている海岸擁壁を、道道移設後も残置し、史跡の保存のために活⽤するよう、北海道庁へ指導すること。

要望2.史跡の良好な保全と活⽤のため、国は北海道、浦幌町と協⼒して積極的な対策を検討すること。

要望3.国指定史跡オタフンベチャシ跡を始めとするアイヌ⽂化に関する⽂化財の保全・活⽤策の策定にあたっては、地域のアイヌ⺠族団体であるラポロアイヌネイションにも事業内容の説明をおこなうと共に、必要な協議を随時⾏なっていくこと。