私たちは、2023年5月26日から28日、北海道浦幌町において、ラポロアイヌネイションの呼びかけにより、先住民族の先住権に関する国際シンポジウム「先住権としての川でサケを獲る権利~海と森と川(イオル)に生きる先住民の集い」(以下「国際シンポジウム」という)を開催した。

国際シンポジウムは、ラポロアイヌネイションが、当初、先住権を全く認めようとしない日本政府との闘いにおいて、世界の先進的な先住民族から、各地の権利回復の状況、各地の闘いの経過を学ぼうと企画したシンポジウムであった。

しかし、国際シンポジウムを通じて、世界では、依然、先住民族が各地で国や州を相手に自らの固有の権利を守る闘いを続けていることが報告され、ラポロアイヌネイションが抱えている諸問題は、世界の先住民族が抱えている、共通の課題であることが明らかとなった。

その結果、国際シンポジウムの参加者は、植民地支配によって失った権利を取り戻すために今も続けられている先住民の闘いをアピールする声明を出すことが必要であると感じて、この宣言を作成した:

私たちは、世界の先住民族が連携し、連帯して、この共通課題である先住民族の権利の回復のために闘うことの重要性を認識し、共同して、以下の宣言をなすものである。

1 伝統・慣習に基づく先住権

私たち先住民は、植民地国家が成立するはるか以前から、各地域において伝統的、慣習的に使用する土地や資源に対する集団的権利を有している

2 先住権の憲法等への明記

先住権は、植民地政府の憲法や法律によって作られた権利ではなく、伝統・慣習に基づく各集団の固有の権利である

各国政府は、この先住民族の固有の権利を憲法に確認的に明記し、その具体的な内容を法律に規定することを求める

3 先住権を尊重した法の執行

各国における法律を含む司法制度は、先住民の古来からの慣習に基づく生活や文化、伝統行事を保護しなければならず、各国の法の執行者は、法の適用にあたっては、先住民族の各集団の固有の権利を侵すことのないように、先住民の権利の内容を十分に理解し、尊重しなければならない

各国の裁判所および法の執行者は、土地や自然資源に対する先住民の権利の行使に対して、不当な刑罰やその他の不利益を課してはならない

4 再活性化し発展させる権利

私たち先住民は、それぞれの地域集団((ネイション・トライブ))の伝統と慣習を実践し、維持し、保護し、かつ再活性化させ発展させる権利をもつ。いかなる国もこの権利を侵害することはできない

5 先住民の伝統的な知識による自然資源管理

各国は、自然資源を使用、利用するにあたっては、その支配地域における生物多様性についての深い知識を有する先住民の伝統的な知恵を参照すべきである

6 自然資源規制手続きへの先住民参加

各国は、自然資源に対する管理と規制を行う場合は、自然資源に対して固有の権利を有する先住民の各集団に対する事前の相談と十分な情報提供を行い、当該集団の十分な情報が提供されたうえでの自由な事前の承諾を得るべきである

7 優先的権利の確認

各国は、自然資源の利用にあたって、非先住民による資源の商業的及びリクリエーション的利用が先住民の各集団の資源利用を奪うことのないようにしなければならない

8 資源保護を名目にした先住権剥奪の禁止

代替的な保全措置が可能である場合、各国は、自国の自然資源保護を理由、名目として、先住民族の各集団の固有の権利を奪うことはできない

9 持続可能な漁業で資源を次世代に

私たちは、私たちこそが伝統の知恵を生かしながら持続可能な漁業を行っていることを確認し、私たちこそが、自然資源を次世代に残していくものであることを自負する

私たちは、以上の項目を確認するとともに、今後も私たちの固有の権利が不当に侵害されないように闘い続けることを決意し、常に情報を共有し、相互に連絡しあい、連帯するネットワークを形成し、連携して闘っていくことを誓うとともに、私たちのこの闘いをさらに世界に広げていくことを宣言する。

最後にシンポジウムにおいて私たちの共通の思いを語ったダニー・チャップマン氏の言葉を引用することにする。

この国際シンポに集まった私たち先住民のストーリーは決してこのシンポジウムで終わるものではありません。これからも私たちは闘い続けていく必要があります。私たちはお互いに連帯していく必要があります。また世界にも伝えていきたいと思っています。私が皆さんに伝えたいことはこの闘いを続けましょうということです。ぜひこれからもつながっていければと思います。

ダニー・チャップマン Danny Chapman

2023年11月30日

アモス・リン Amos Lin 林光義:アミ族 Amis Nation、台湾

マラオス Maraos 瑪拉歐斯:タオ族/ヤミ族 Yami Nation、台湾

アウェイ・モナ Awi Mona:セディック族 Seediq Nation、台湾

ダニー・チャップマン Danny Chapman:アボリジナルの人々、ニューサウスウェールズ・先住民土地評議会議長 Aboriginal Man,the Walbunja Clan, Chairperson of New South Wales Aboriginal Land Council (NSWALC)

キャサリン・リッジ Kathryn Ridge:弁護士 Lawyer

ジョー・ワトキンス Joe Watkins:オクラホマ州チョクトー族の登録メンバー Choctaw Tribe

ラス・ジョーンズ Nang Jingwas, Russ Jones;ハイダ・ネイションの世襲首長 Hereditary Chief, Haida Nation

アスラック・ホルムバルグ Aslak Holmberg:サーミ評議会議長 President of the Saami Council

ラポロアイヌネイション会長 差間正樹 SASHIMA Masaki:Raporo Ainu Nation Chairperson